みなさんは、鉄筋造りの建物と木造の建物ではどちらが火に強いと思いますか。
木よりも鉄の方が燃えにくい、だから鉄の方が強い、というのがぱっとひらめく答えです。
だから、次のような文章を読むと、ちょっと意外に思えるかもしれません。

「木と鉄は火に弱い。鉄は火に強いと思っている人がいるが、実際には400度くらいで強度が半減するため、事実上、木造と同じくらい弱いと考えて良い」と、作家であり工学博士である森博嗣さんは書いています。

実際、これは建築工学上の事実ですが、我々のいわゆる「常識」とは異なる見解ではないかと思います。常識は、これまでの経験や習慣のなかで形作られたものです。昔の人は、経験が示すような、地球が平らであるという常識のなかで生活していましたが、今ではこれが誤りであるということはよく知られています。木が火に燃えている場面の経験と鉄が炎の中でも燃えないという経験から、先程のような「鉄は火に強い」という常識が形作られますが、少なくとも建築のための構造材という観点でみれば、この常識は誤りであることになります。今皆さんがアタリマエだと思っていることでも、実情にてらしてみれば全く筋違いだということも数多くあるのです。

「常識」の力は非常に強く、ここから抜け出すことは非常に困難です。なにしろ今まで当然だと思っていたことを捨てるのですから、かなり意識的にでなければできません。時には痛みや不安、苦しみ、ストレスを伴うこともあります。しかし、古い「常識」が誤りであったとすれば、そこから一歩踏み出して、新しい事実を受け入れること、これこそが前進なのではないでしょうか。

勉強でも事情は同じです。みなさんはこれまでに、宿題のやり方、分からないことが出てきたときの自分の対処法、学習のスケジュールの立て方について、さまざまな常識を身につけてきたはずです。しかしその常識が通用しなくなったら?たとえば、今までの習慣で行ってきたやり方でテストの点が思うように取れなくなってきたら?そのときには、これまでの常識、これまでの習慣、やり方を見直し、時には思い切って壊してしまうことも大切です。

もちろん壊しっぱなしではいけませんね。作り直す、建て直す作業が必要です。建て直すときにどんな素材を使えばよいのか、どのようなやり方がよいのか。これは一人一人異なります。一番大切なのはみなさん自身がどうすればよいかを考えることです。ただ、どうすればよいのか困ったときには、必ず先生に相談してくださいね。