プロ野球選手の赤星憲広さんが書いた「頭で走る盗塁論」(朝日新書)を読みました。
赤星さんと言えば、なんといっても盗塁です。阪神タイガースに在籍した9年間で381盗塁を記録。セ・リーグ新記録となる5年連続盗塁王も獲得しました。
先生は、東京ヤクルトスワローズの大ファンなのですが、阪神戦で赤星さんがランナーで出るたびに、いつも盗塁されるのではないかと気になってしょうがありませんでした。相手ファンから嫌がられる選手は、良い選手が多いです。“レッドスター”の愛称で親しまれた赤星さんは、多くのプロ野球ファンの記憶に残る名選手でした。

 みなさんは、盗塁が成功する確率はどれくらいか知っていますか。プロ野球では、ピッチャーが投げたボールをキャッチャーが捕球し、二塁にボールが届くまでが平均で3.2秒と言われています。
一方、赤星さんが盗塁のスタートを切ってから二塁に到達までも同じ3.2秒。つまり、俊足の赤星さんでさえも、セーフになる確率は計算上では五分五分ということになりますが、赤星さんはプロ通算で盗塁成功率8割以上という高い数字を残しました。なぜ成功率を高めることができたのでしょうか。

赤星さんは、「盗塁が成功するかどうかは、事前の“準備”で8割決まる」と語ります。準備とは、事前に相手を研究すること。相手のクセや配球を見抜いておくことで盗塁成功率を飛躍的に高めたのです。

例えば、赤星さんが元読売ジャイアンツの上原投手(現レッドソックス)と対戦したときの話です。上原投手は投球の前に、両手を胸の前で組んでタメをつくるときに「左肩が内側に入っていれば牽制球はしない」というクセがあることを、赤星さんは日頃から観察し、把握していました。そのクセが出た時は、自信を持って盗塁のスタートを切れたそうです。
頭をかく、まばたきの頻度、目の動き、無意識にピッチャーが行う様々な動きを常に観察し、事前に頭にインプットして準備しておくことが、足の速さよりもスライディングのテクニックよりも重要だと赤星さんは語ります。

また、キャッチャーにもクセがあるそうです。ピッチャーに速いストレートを要求する時は「ここに投げろ!」というように、どっしりとミットを構え、逆に遅い変化球を要求する時は、ミットの構えがやわらかくなるキャッチャーが何人もいたそうです。当然、遅い変化球を要求する時は、盗塁のチャンスです。
私たちは「足が速い選手」=「盗塁が上手い選手」と考えてしまいますが、赤星さんの話を聞くと、「頭を使って、どれだけ研究し、準備するか」が盗塁の真髄であることがわかりますね。体だけではなく、脳にも汗をかきながら、赤星さんは盗塁を積み重ねていったのです。

さあ、今日もゼミが始まります。
ゼミは、先生とみなさんの真剣勝負の場。
みなさん、この1週間で、しっかり「準備」はできていますか?