日本語にいろいろな方言があるように、英語にも方言というものがあるのです。コックニーというものを知ってますか?イギリスの下町の、労働者階級の人たちが使っていた独特の訛りを持つ英語です。
例えば、「エイ」と発音するところを「アイ」と発音したり、my father(わたしの父)「マイ ファーザー」をme father「ミー ファーヴァー」と発音したり「ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ」を「ア・イ・ウ・エ・オ」と発音したりします。
有名なところでは、オードリー・ヘップバーンが演じる下町娘を上流社会で通用する女性に教育する「マイ・フェア・レディ」という映画にコックニーが出てきます。登場人物のヘンリー・ヒギンズ教授が、その下町娘に「エンリー・イギンズ」と呼ばれる場面があります。
また、サッカー選手として世界的に有名なデイビッド・ベッカム選手は、この訛りのため、インタビューが聞き取りにくいと批判され、品がないとまで非難されたことがあります。
かくいう先生も、地方から東京の大学に進学した際、方言が恥ずかしくてなかなか会話ができず、上京してすぐには友人ができませんでした。友ができても、方言は隠して生活していましたが、電話で実家と話をした後で、友人から「今何しゃべってたの?」と訊かれてショックを受けたこともありました。
「英語音声言語学」という授業で、コックニーというものを初めて知った時の担当の先生がおっしゃっていた言葉です。「世界にはいろいろな国があり、いろいろな人が存在し、いろいろな言語が話されています。その言語はいろいろな歴史と文化の中で生まれたものです。言語学者としての私の信念は、“すべての言語は美しい”。」その授業から、先生は方言を隠すことを辞めました。今でも心に残っている授業です。
寒い東北地方の方言にはとてもあたたかみがあります。九州の方言はなんだか勇ましい感じがしませんか。関西弁といっても大阪・京都・兵庫でも少しずつ違いがあるのを最近知りました。日本という国で、日本語の中にも様々な方言があり、それを知ることはとてもおもしろいことだと先生は思います。生まれ育った土地で身につけた独特な言語は、その人の個性です。
日本だけにとどまらず、世界中でもいろいろな人と触れ合い、いろいろな言語を知る=いろいろな文化を知ることは、国際社会ではかかせませんが、同時に自分の言語を知ってもらう=文化を知ってもらうことが大切なことです。皆さんには、互いを認め国や人種を超えたつながりをつくる本当の国際人になってもらいたいと願います。