君達は、「日本理化学工業株式会社」という会社を知っていますか?

随分難しそうなことをしていそうな名前の会社ですが、この会社は、君達に関係のある、ある“もの”を作っている会社です。

それは≪チョーク≫です。
この会社は日本で一番チョークを作っている会社です。
ちなみに、「ダストレスチョーク」というのは、この会社のブランド品です。品質も最高です。

でも今回、先生がこの会社を取り上げるのは、いいチョークを作っているからではありません。

その理由とは、この会社の、実に約7割の社員が、知的障害者なのです。
君達の学校にも、特別学級みたいなクラスがあるところもあるかと思います。
この会社では、そういった学校にも通えなかったほどの重い障害をもつ方々も働いています。

しかし、初めからこの会社は、知的障害者の方を雇っていたわけではありません。
そのきっかけは、会社の近くにある養護学校の先生が、「自分の生徒を雇ってほしい」と訪ねてきたことだそうです。
最初、社長は断ったそうです。知的障害者の社員を雇う責任を負う自信がなかったのでしょう。
しかし、この養護学校の先生は、それから3度も訪ねてきました。
社長は、その熱意に押されて、「1週間だけなら」という期限付きで雇いました。
ちなみにその子は、女の子です。

最初は、周りの社員も戸惑いました。実際、仕事のスピードも遅かったし、ミスも多かったようです。
しかし、その女の子のくじけずに一生懸命に働く姿に、だんだん周りも心を動かされていったそうです。

そして、1週間の最終日・・・、周りの社員が社長に詰め寄りました。
「自分たちが面倒を見るので、この子をやめさせないでほしい。正社員にしてあげてほしい。」と。

社長はためらいました。
なにも社長は意地悪なわけではなく、社長とすれば、
「この子にとって、この会社で働くというのは、ハードルが高いのではないか?それなら、病院のベッドで周りの世話を受けながら暮らしていく方が幸せなのではないか?」
と思ったそうです。

しかし、実際は違いました。
ほかの誰よりも、その子自身が「やめたくない。これからも働かせてほしい。」と言ったそうです。

それを不思議に思った社長は、自分が日頃、親しくしているお坊さんに相談しました。
話を聞いたお坊さんは言いました。

「それは、そうですよ。なぜならば、人の幸せというのは4つあるからです。
①人に愛されること ②人にほめられること ③人の役に立つこと ④人に必要とされること
これらは、働く事によって得られることなのですから。」

以来、この社長は、色んなアイデアを出しながら、会社を知的障害者のみなさんに大勢働いてもらえる環境作りをしたそうです。
(この前の鳩山総理は、総理大臣のときにこの会社を見学したこともあるそうです。)

この話を知った先生は、とても反省しました。
今、自分の置かれている環境が当たり前であると思っていることに。

君達もこの話によって、何かしら感じてもらえば幸いです。

また、先ほど紹介した4つの幸せを、互いに与え合えるような関係を君達と作っていきたいと、先生は勝手に思っています。

自分の学校で確かめてみればいいかもしれませんね。
学校の先生方が使われているチョークが、「日本理化学工業株式会社」のものであるかどうかを。