皆さんは、漢字でも英単語でも、1回で覚えることができたら、どれだけいいだろうと思ったことはありませんか。
もし、1回で物事を覚えることができたらどうでしょうか。それは、素晴らしいことでしょうか。実は、そんなことになったら大変だと思います。たとえば、休みの日に繁華街へ出かけ、そこで1000人の人と出会ったとしましょう。人の顔を見たということは、視覚を通じてその情報が脳の中に取り込まれたということです。1回で記憶に残るということは、その1000人の顔も覚えてしまったということです。また、以前、出会った人の顔も覚えているわけです。
すると、こうなります。「ああ、あの人は、86日前に駅で見た人だ。あの人は、43日前にレストランで食事をしていた、、、」
考えただけでもおかしくなりそうですね。なぜなら、そんなことは覚えていても、何の役にも立ちません。だから、特別な印象でもない限り、そのようなことは覚えていないですよね。
次に、毎朝、学校へ行く時間に、たまたま時間が同じになるおじさんがいるとします。そのおじさんは、自分とは全く何の関係がありません。しかし、よく道で顔を見ます。すると、いつの間にか、顔を覚えてしまうものです。繰り返しますが、その人とは全く関係がないので、覚えようとも思っていません。でも、自然と覚えてしまうのです。
これらのことから何が言えるでしょうか。
(1)人間の記憶は、覚えたい事柄がその人にとってどれだけ重要かは、あまり関係がない。
(2)脳は、1回しか出会わないものは重要でないと判断して消去する。しかし、繰り返されるものは、記憶する。
最後に、初めて会ったある人と60分間、真剣に話し合ったとします。でもそれからあと59日間、全く出会っていません。
また別のある人と初めて会って、1分ほど軽く挨拶などしたとします。そして、そのあとの59日間、あいさつ程度ですが、毎日1分話をしているとします。
どちらの人とも合計したら60分になりますが、どちらの人のほうがより記憶に残り、親しみを持てるでしょうか。当然、後の人のほうですよね。
そこで、3つ目です。
(3)1日にどれだけ長時間覚える努力をしても、それはただの1回。短時間でもいいから、小分けにして別々の日に覚える。
結局、当たり前の結論になりましたね。しかし、人間の記憶は勉強だけ特別扱いというわけにもいかないようです。