かけ算の九九といえば「1×1」から順番に覚えていったと思います。「1×1」から始まるのになぜ「九九」と呼ばれているのでしょう。実は、九九はもともと古代中国で生まれた暗記法で、当初は「九九、八十一」から覚えるのが普通だったからです。
当時の中国人にとって、九九は特権階級だけの人が使うものでした。計算をするのに便利な九九を、一般の人に教えるのはもったいない。そこでわざと覚えにくいよう「九九、八十一」と大きな数から唱えるようになったそうです。そのため「九九」と呼ばれるようになりました。
小さな数から唱えるようになったのは13世紀頃からといわれ、このころになると、九九は特権階級のものではなくなり、それにつれて覚えやすい今の形にかわりました。
日本に九九が入ってきたのは平安時代頃で、日本でも当初は「九九、八十一」から唱えていました。日本には言葉遊びがあり、数字を九九で表現することが昔から行われています。
万葉集には、九九を洒落て表現している歌がいくつかあります。たとえば、「十六」と書いて「しし」、「八十一」と書いて「くく」、「ニニ」と書いて「し」と読ませるのです。
また、「二八そば」というおそばがありますが、これは小麦粉2割にそば粉8割で打ったそばだからと現在では解釈されています。ところが、その昔はおそば が1杯16文だったことから、「2×8=16」の語呂合わせで「二八そば」と呼んでいたといわれています。このように、九九は身近なものにも隠されている のですね。
かつては特権階級の人しか使うことを許されなかった「九九」を、今では小学2年生で学習しています。これは当時の人からすると、とてもすごいことなので す。さらに、小学2年生で「九九」を習うのにもきちんと理由があります。「ニニンガシ、ニサンガロク・・・」という風に呪文のように唱えながら覚える暗記 は、小さい頃にしかできないことなのです。中学3年生頃からは「単純な暗記」で覚えることは難しくなり、「なぜそうなるのか」という理屈と一緒でないと覚 えることができなくなります。これは人間の脳が大人の脳に成長する上で、避けては通れない道なのです。
期末テストが終わった人も多いと思います。中にはテスト前日に「一夜漬け」で暗記をした人もいるかもしれません。しかし、「一夜漬け」なんて無茶な暗記 が通用するのも今だけです。脳が大人に成長する高校生では通用しなくなりますよ。テスト直前にあわてて暗記することのないよう、日頃からコツコツと暗記を する習慣を身につけましょう。