中学校の卒業アルバムの寄せ書きに当時の担任が書いてくださった言葉。
先日亡くなった音楽家の坂本龍一さんが好んだことわざとして紹介されている記事を見てふとそのことを思い出しましたが、その意味が「人の一生など短いが、たとえその作者が亡くなった後も作品は末永く遺るということ(だから何か遺せるものを作って生涯を終えなさい)」だと私はずっと思い込んでいました。
この言葉は古代ギリシアの医師ヒポクラテスのもので、医師を志す若い医学生たちへの激励の言葉として「医術を極めるためには長い年月を要するから、一生怠らずに学び続けなければならない」という意味だったそうです。
「転石苔むさず」や「情けは人のためならず」などと同じように、もともとの意味から解釈が変わっていったとのこと。
(ちなみに”art”は芸術だけでなく、人が身につけた技能全般を指すこともあります。)
人の一生には限りがあり、いつか終わりが来る。
そう思うと、今この瞬間を大切にしたいと強く思います。
しかし、かといってまだまだ人生は長いのだと思うと、今できることでもちょっと大変だと後回しにしたくなるものです。
世の中で大きな事を成しえている人というのは、おそらくそのタイムリミットや命など時間の有限をものすごく意識できているから、今すぐやる、計画的にやっているのです。
海を渡り活躍している大谷翔平選手はその最たる例で、望んだ成功の姿からの逆算で子どもの頃から「今すべきこと」を考えて実行しているからこそ彼の今があります。
きっと講習会や合宿が愉しいのも、数日しかなくて、時間に限りがあって大変だから必死になり、必死になるからやりとげた時に充実感がある、からではないでしょうか。
有限だと思うからこそ「今」を充実できる。
結果としてあとに遺るものも大きい。
さて、今年の夏をどうするか。
夏休みにやりたいこと、やるべきこと、または9月にあるべき自分の姿を書き出してみて、そして与えられた時間を考える。
そうすると今すぐやるべきこと、タイムリミットが見えてくるでしょう。
もしかするとこの夏の過ごし方がこれから続く君の人生の基礎となるかもしれません。
けっして大げさなことを言っているわけではありません。
だって芸術は長く、人生は短いのですから。
ちなみにヒポクラテスは他にもいくつもの名言を遺していますが、その中で現代に生きる私たちへの警鐘ともいえる言葉を最後に記しておきます。
「人は自然から遠ざかるほど病気になる」