コロナによって世界が一変した2020年。日本のプロ野球も、試合数の削減・無観客試合の実施・延長回の制限など、今までにない特別なシーズンとなりましたが、最後は福岡ソフトバンクホークスが4年連続日本一という快挙を成し遂げて幕を閉じました。今回の優勝の最大の立役者は、パ・リーグMVPとなった柳田悠岐選手(通称:ギータ)だとしても過言ではありません。規格外の男ギータは、日本を代表するパワーヒッターで、見ていて気持ちいいぐらいのフルスイングが代名詞になっています。(ご存知プロスピAの最新データでも、ミート・パワー・走力が、野手で唯一のすべてAランクの現役最強バッターです)
昨年7月18日の京セラドームでのオリックス戦で放ったライトスタンド上部の天井照明付近直撃ホームラン(推定飛距離150m超え弾)には度肝を抜かれました。普段は天然キャラで面白く、宇宙人とも称される奇天烈な言動の絶えないギータですが、圧巻のフルスイングの原点がどこにあるのかが気になって、そのルーツをたどってみました。
高校時代、ギータは名門・広島商業で野球に取り組んでいましたが、甲子園出場はゼロ、細身の体で通算ホームラン数もわずか11本と、スカウトの目に留まるようなことのない、無名の選手でした。そして、高校卒業後は、全国的にはあまり知られていない広島経済大学に進学しました。そこでは、かなりの成績をおさめましたが、あくまでも中距離好打者の域でした。
そんな3年生の秋、野球人生を決定づける、恩師との運命の出会いがありました。新監督として、龍憲一氏が就任したのです。龍監督は、かつて、広島カープなどでプロ通算60勝を挙げた名投手でした。当時、生涯本塁打数世界一の王貞治氏(現ホークス会長)とも何度も対戦し、13本ものホームランを打たれています。何人もの一流打者と対戦した経験から、三振もあまりなく、フルスイングしても崩れることのないギータに限りない可能性を確信し、いつも「三振してもいいから、しっかり振ることだけは忘れるな」とだけアドバイスしていました。
ギータは、龍監督の教えの通り、とにかく振って振って振りまくりました。すると、徐々に才能が覚醒し、ホームランの数が急増していきました。ただ、ギータ本人は、その時はまだプロ野球選手になれるとは思っていませんでした。しかし、龍監督は、このままケガなく一生懸命やればプロにいけるぞ、と褒め続けました。最初、絶対無理だと決めつけていたギータでしたが、龍監督の言葉を信じて意識が変わり、やるだけやってみようという気持ちになって、ひたむきに頑張っていきました。そう、龍監督からずっと褒められたことが、ギータに大いなる「自信」を持たせてくれました。
時は流れ、現在、ホークスの主軸としてのみならず、日の丸を背負って世界と戦えるレベルのスラッガーへと成長したギータ。大学時代に芽生えたあの自信が、こだわりに満ちた、今の豪快なバッティングを支えているのです。
ギータは、とあるヒーローインタビューで、「今シーズンは何本打つ?」という質問に対して、「果てしなく」と答えていました。それは、「常に全力でプレーして、できる限り打つ。そうすれば、結果は後からついてくるはずだ。」と考えているからです。これからの時期、テストや模試が多くなり、そして、人生の岐路となる「受験」も佳境に入っていきます。そんな折だからこそ、ギータのように、未来への可能性を信じて、「果てしなく」自分の限界を突破していくことを願います。
結果を恐れず、フルスイング!