1月から、2020年のNHK大河ドラマが始まっています。タイトルは「麒麟がくる」。物語の主人公は戦国時代の武将・明智光秀ですが、彼がアフリカから首の長いキリンを連れてくるというストーリーではありません。そもそも、あまり聞きなれない“麒麟”ですが、確かに、どんな動物図鑑にも載っていません。それもそのはず、その不思議な生き物は、鳳凰・龍などと同様の、古代中国の神話に出てくる伝説上の霊獣なのです。
神聖な幻の動物とみなされ、1,000年も生きると言われる麒麟、その容姿については、身体は鹿で、牛のしっぽと馬のひづめを持ち、龍のような顔に一本の角があります。全体の毛は黄色く、ウロコで覆われ、さらに背中の毛は五色に彩られています。わかりやすく言えば、炭酸飲料「キリンレモン」のデザインキャラクターをイメージすればいいかもしれません。(2018年からのリニューアルパッケージ) 普段の性質は非常に優しく、足元の虫を踏んだり、草を折ったりすることさえ恐れるほど殺傷を嫌っているので、地に足を下ろさず、常に空を翔けています。昔から、麒麟は良いことがある前触れとして姿を現し、太平の世のしるし、幸せを招く存在、安定した穏やかな日々をもたらす幸福の象徴とされています。そして、古くからの言い伝えでは、「仁の心を持つ聖人が出現する前兆として現れる」とか、「王が仁のある政治を行う時に現れる」と語り継がれています。見た目はいかつい獣類の長ですが、実は、他者への慈しみと思いやりを持った仁獣(仁徳を備えた獣)なのです。
中国の春秋時代末期の思想家「孔子」(儒教の開祖)は、あらゆる教えの根本概念に「仁」を据えています。その最も大切な要素は、「おのれの欲せざるところ、人に施すなかれ。」(自分がしたくないことを人に押し付けるな。)ということで、「人を思いやり、人を尊重する」、それが仁です。(その孔子が生まれた時にも、麒麟は現れたそうです。)
思えば、現代社会は、昭和から平成へと、大きな時代の転換期を向かえ、ある種、戦国時代に通ずるものがあります。どこか閉塞感が漂うこの令和の時代、自身のことだけで精一杯で、他人への愛情の意識が乏しく、正に、仁なき世の中と感じます。それでも、麒麟は平和で穏やかな国にやってくる。そして、麒麟の現れるところ、すべての人は幸せになる。長い歴史を経て今も受け継がれる聖獣伝説を信じ、人を思いやる気持ちを忘れずに、麒麟の到来を切に願いたいですね。
余談ですが、キリンレモンのブランドロゴの図柄のその中に、「キ」「リ」「ン」の3文字が隠れています。うまく見つけることができるでしょうか。また、キャップ表面のデザイン、商品名の文字のものが通常ですが、数十分の一の確率で、聖獣マークのレアなキャップが混ざっているようです。手元に麒麟が降臨したら、ちょっといいことがあるかも。