昨年は台風や洪水に見舞われ、異常気象という言葉をよく耳にしました。しかし、近年感じるのは夏の猛暑と冬の雪の少なさです。これこそ異常に思えてなりません。
そこで、いま地球でどんなことが起こっているのかを一緒に考えてみたいと思います。
異常気象の大部分は地球温暖化が原因で起こっていると考えられます。
温暖化によって南極の氷床が融け出し、グリーンランドにある雪の堆積面積はここ数年で20%ほど減少しています。永久凍土の融解、氷河の後退などが各地で起こり近年は1年で3㎜以上の速度で海面上昇が観測されています。
温暖化によって蓄えられた熱は海洋が巨大な貯蔵庫となって吸収してくれています。もし、海に蓄えられた熱を全部大気が吸収していたら、いまよりも30℃も気温が上昇すると予測されます。我々は海のおかげで生き永らえているといっても過言ではないのです。
ところで、気温が高くなると、それにともなって海水温が高くなります。そうすると海水の蒸発量が増え、雲が発生してきます。また、気温が上昇すると、大気中に含まれる水蒸気の量が2倍、4倍、8倍、…とすさまじい勢いで増えていきます。その結果、巨大な雲が形成され短時間に爆発的な雨をもたらす原因となるのです。また、海面水温の上昇は対流を生じさせ、低気圧になったところに風が吹き込んで上昇気流を起こし、お互いの相乗効果で、より破壊的な台風を生み出します。日本でも最近、「ゲリラ豪雨」や「爆弾低気圧」といった言葉が使われるようになりました。
地球温暖化の原因を探ると、そこには産業革命以来、石炭や石油の燃焼によって排出された二酸化炭素を中心とした温室効果ガスがあります。温室効果ガスによって地球は毛布をかぶったような状態になっており、ガスが増えると地球がどんどん暖かくなります。
大気中に微々たる量しか存在しない二酸化炭素がこれだけの大きな影響をもたらす原因といわれても想像できないかもしれませんが、二酸化炭素は1度発生するとなかなか分解しないところが厄介なのです。寿命は300年~500年と非常に長く、長期にわたって蓄積されると、熱の収支バランスを崩すこととなるのです。
これまでは、森林や海洋、土壌が二酸化炭素を吸収してきましたが、その吸収能力をはるかに超える速度で増えており、どんどん溜まっているのが現状です。世界の熱帯林や森林は大量伐採によってずいぶんその面積を減らしてきました。さらに森林の「高齢化」が進んでいます。森林は100年近く経つと、光合成による二酸化炭素の吸収はほぼゼロになり、吸収源として機能しなくなります。呼吸を促すには伐採と植林を進めて、新陳代謝を促す必要があるのですが、森林による吸収はほぼ限界に達したと言われています。
そこで、吸収できないのであれば、排出を抑えようという考えのもと、二酸化炭素の排出量を世界全体で2050年までに半分にする必要があるいという話が出てきたわけです。先進国は8割削減をサミットで掲げています。いま可能な限り温暖化対策を講じないと2050年以降気温の上がり方のスピードが5倍になるという予測もあります。
温暖化が地球の生態系に与えるダメージはかなり深刻です。1.5~2.5℃の平均気温の上昇により約20~30%の種の動植物が絶滅の危機に瀕します。また、海水中に多くの二酸化炭素が溶け込んで海洋が酸性化することによって、海洋中のプランクトン、サンゴ、貝類、甲殻類にダメージを与えます。そうなると魚にも影響が出ることは必至です。
昨年、話題になったウィルス性の熱帯伝染病デング熱はヒトスジシマカという蚊に媒介されますが、その分布域が北上しており、また、1年のうちの生息期間も長くなっているためウィルス感染リスクが高くなっています。また、蚊媒体の感染症であるマラリアも地球温暖化の進行により、日本が汚染地域に入るリスクが高まります。
温暖化による干ばつや洪水などによる被害は貧困を招き、感染症の拡大や自然資源の争奪などの紛争にもつながります。それがさらに貧困を深刻化させていくという負の連鎖が起こり得ます。
温暖化は決して将来の問題ではなく、今の問題です。そして国を越えて地球に住むすべての人々が取り組むべき問題です。エアコンの温度設定や使わない電気はこまめに消すなど身近なできることから行動を起こさなければ、取り返しがつかない状態になりかねません。自然の変化はある臨界点を越えると一気に進行します。じわじわとその臨界点が近づいている気がして仕方ないのは杞憂でしょうか。