161017今回は「スティーブ・ジョブズ」の話をします。皆さんも知っているアイフォンやアイポッドを開発したアメリカのアップル社の創業者です。今年の10月で、ジョブズが亡くなって5年になります。

今では私たちの周りにコンピュータはあふれていますが、ジョブズが「アップルⅠ」というコンピュータを開発するまで、コンピュータは大きくて高額で、大企業などが持つ限られた機械でした。そのコンピュータを、小さくて安く、誰もが使いやすいものに変えたのがジョブズの功績です。アイフォンやアイポッドも同様ですね。音楽プレイヤーや電話機を簡単な操作で身近に携帯できるものに変えたのが、ジョブズなのです。

そんなジョブズのエピソードを一つ紹介しましょう。ジョブズは大学生の頃、つまらない授業にあきて大学を中退したのですが、「カリグラフィ」という西洋書道の授業だけはこっそりと参加し、文字のデザインの勉強に熱中していました。アルファベットの様々な書体が持つ文字の美しさに感動し、熱心に研究していたそうです。

コンピュータと西洋書道は全く別の世界で、何の関係もありません。一見、ジョブズは無駄で回り道のような勉強をしていたのですが、10年後、「アップルⅠ」の後に「マッキントッシュ」というパソコンを開発する時、西洋書道の勉強が美しい「フォント(文字)」の作ることに役立ちました。

「マッキントッシュ」以前のパソコンでは、お世辞にも美しいとは言えない、地味で無骨なフォントしか使われていませんでしたから、デザイナーをはじめとする多くの人々がジョブズの作ったマッキントッシュを支持しました。そしてそこから、パソコン用に多くのフォントが開発され、広く使われるようになったのです。

もともと「西洋書道」と「コンピュータ」は点と点で無関係な存在ですが、ジョブズはそれをつなぎ合わせて見事な成果を出したのです。亡くなる6年前に、ジョブズはスタンフォード大学の卒業式に招かれて、次のようにスピーチしています。

「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。」

未来を信じて、今を一生懸命に生きよう、ジョブズはそう言いたかったのだと思います。