8月6日、ついに始まりましたね(前日の5日にはサッカーの予選がすでに始まってはいますが)。4年に1度の世界最大のスポーツの祭典、オリンピック。世界中の人が選手たちのがんばりに大きな声援を送ることでしょう。
オリンピックでは、毎回感動のお話が残されていますが、その中の一つを皆さんに紹介します。
マラソンはオリンピックの花形競技の一つです。現時点での世界最速記録はケニアの選手が出した、2時間2分57秒というものです。単純に計算すると・・・
100メートルを17.5秒、50メートル走を8.75秒で42.195キロを走ったことになります。時速にすると20.6km。これは自転車を全力でこいでいるときと同じくらいのスピードです。それを、2時間あまり保っていくわけですから、すごいですね!
さて、逆に世界「最長」記録も存在します。それは・・・「54年8ヶ月6日5時間32分20秒3」
この記録は、日本人が持っています。その選手の名は金栗四三(かなくりしそう)さんといいます。
彼は1912年のストックホルム大会にマラソン代表として参加しました。しかし、日本からの長旅やスウェーデン特有の環境(白夜といって夜でも明るい)、迎えの車が来なかった、しかも当日は40度という記録的な暑さだったなどの不運に見舞われ、途中で気を失ってしまいました。それを見かけたスウェーデンの農家の人が彼を助けて介抱してくれるのですが、彼の意識が戻ったのは翌日の朝。彼は悔しい思いを抱えて宿舎に戻りました。
しかし、彼はこのあと2度オリンピックに参加するなどの努力を見せ、引退後は後輩たちの指導に力を注ぎます。
スウェーデン大会から約50年たったある日、彼の家に1通の手紙が届きます。宛名は「スウェーデンオリンピック委員会」。何かと思って開いてみると・・・
手紙の文面は、「あなたはマラソンで行方不明になったままなので、ゴールをしに来てください」
彼が気を失って倒れてしまった50年前の大会で、彼は棄権届けを出しておらず、公式記録としては「行方不明」となっていたのです。スウェーデンオリンピック委員会がオリンピック開催55周年の行事をすることになって当時の記録を調べていたら、「行方不明」になっていた選手がまだ生きていることがわかり、連絡をしてきたのでした。
75歳になっていた彼は52年ぶりにストックホルムに赴き、ゴールテープを切りました。ゴールを果たした瞬間、「日本の金栗が只今ゴール。タイムは54年8か月6日5時間32分20秒3…。これで第5回ストックホルム大会の全日程は終わりました」とアナウンスされ、金栗選手の姿はスウェーデンの公共テレビで放送されたのです。
先生は、このお話を知ってとても感動しました。
一生懸命に一つのことをがんばり続けた金栗さん。そして、そのことをしっかりと評価してくれたスウェーデンのオリンピック委員会の計らい。
君たちは、この夏、オリンピックの選手たちとともに「熱い夏」をすごしていると思います。
多くの皆さんは合宿に参加し、多くの経験を積んでくることでしょう。その一つ一つは君たちにとって大きな財産になります。そしてそれは、君たちの心の中にしっかりと刻み込まれるはず。
そう言いきれるよう、自分自身の最大の力を発揮して、この夏を乗り切ってください。期待しています。