五月晴れの空に鯉のぼりが風に泳いで、木々の緑がいよいよ濃くなる気持ちのいい季節です。そんな季節に今年も、たくさんの会社で「入社式」が行われました。社会人としての第一歩を踏み出して、ひとりひとりの新入社員が社会人としての責任、企業人としての責任、社会的責任を背負う第一歩の日。社長さんから激励の言葉が贈られます。そんな中、ある社長の言葉が印象に残りました。それは「自分の人生を切り開いていける人間になってほしい」という言葉です。ユニクロの柳井社長の言葉です。とてもいい言葉ですね。

 社会人になるということは、親の世話にならないで一人で飯を食うことができることだと思います。そして、社会の一員として未来の日本、あるいは未来の世界をつくることに参加するということです。やがてひとりの社会人となる日のために君たちの今があります。では、社会人になるためには何が必要か。『社会人に必要なことを3つあげてください』という面白いアンケートをある生命保険会社が行っています。多くの大人が社会人としてこんなものが必要だよ、と答えたものが次の十項目です。(多い順)

【1位 協調性があること 2位 素直であること 3位 向上心があること 4位 我慢強いこと 5位 頭の回転が速いこと 6位 環境に適応するのが早いこと 7位 仕事に情熱があること 8位 臨機応変であること 9位 空気が読めること 10位 精神的にタフであること】(ライフネット生命保険/2009より)このアンケート結果をみなさんはどう思いますか。

 人間の「能力」には二つのものがあると言われています。一つは「ability」(アビリティ)、もう一つは「competence」(コンピテンス)です。どちらも「能力」という意味なのですが違います。

 アビリティとは、「成績がよい」「英語が話せる」「資格をもっている」パソコンができる」といった能力。勉強や学習を通して習得できる能力。自分ひとりでも発揮できることから、「個人的能力」と言ってよいでしょう。それに対して「コンピテンス」とは、「コミュニケーション力」「リーダーシップ」「協調性」「向上心」「社会常識」「積極性」といった能力。さまざまな経験や体験を通して身につけることができる能力。他人との関わりの中で習得され、発揮される能力であることから「社会的能力」とよぶことができます。

 どちらも生きていく上でかかせない能力なのですが、アビリティが比較的習得しやすいのに比べて、コンピテンスのほうが習得するのが難しいことがわかります。それはコンピテンスが、さまざまな体験を積み重ねて習得していく能力で、長い時間が必要だからです。そして、「おやっ」と気づくことがもうひとつあります。それは、前の「社会人に必要なもの3つのアンケート」に出てきたベスト10のほとんとんが「コンピテンス」に属していることに気がつきます。

 ティエラの会員なら誰もが参加してほしい夏の合宿は、この「コンピテンスの育成」を大きな目的として実施しています。「さまざまな経験や体験を通して身につけることができる能力。他人との関わりの中で習得され、発揮される能力」を合宿の場で身につけてほしいのです。他人と交わり、他人と積極的に関わることで、他人にもまれながら、他人に学び、他人に鍛えられて自分を強くしていく。そうした、社会人になるために必要なものが「合宿」にはあります。

 自分で持ち物を準備して住み慣れた居心地のよい家を出るところからスタートする合宿。親と子が離れ離れとなり、互いが「親離れ」「子離れ」をする。自然と一つになったり、海外の家庭を体験したり、いつもと違う勉強空間の中に自分を置いたり、違う仲間と違う場所で寝食を共にしながら自分を感じる体験。心と身体と視野の開拓。

 合宿は不自由な空間です。なぜなら、居心地のよいいつもの住み慣れた家を出て、知らない他人と一緒に生活を共に過ごすからです。好きなときに好きなものを食べ、好きな時間に寝るといった自分のペースだけではだめで、協力しあい、時にはがまんすることも必要です。ストレスに耐え、予測しないことにも出くわします。それでも、仲間と共に何かをする喜びや、これまで体験したことがない感動や喜びに涙を流すこともあるでしょう。「合宿が自分を大きく成長させてくれた」と多くの先輩が語り伝えてくれています。そうした合宿だからこそ、「コンピテンス」を身につけることができるのです。
この夏の合言葉は「コンピテンスに挑戦!」