先生が小学生のころ、クラスの中で円周率を覚えるのがはやっていました。算数の教科書にある「コラム」みたいな欄に羅列されていた数字をクラスの人たち(特に男子)が覚えていたものです。
「3.14141592653589793238462・・・」桁が多くなれば、本当に言っている数字が正しいのかどうか誰もわからないにも関わらず、やたらと勝ち誇ったようにそらんじる人が数人ぐらいいたものです。
そんな人たちを見て、なぜか先生は悔しく思っていました。
すごく「負けた」という気分でした。
そこで変なライバル心が芽生え、「自分も負けてられない。何かを覚えねば」というミョーな使命感
にかられたのです。そして暗記する題材に選んだのが「世界の首都」でした。まずは知っている国・聞いたことがある国から覚え、そこからヨーロッパ・アメリカ・アジア・そして非常に困難なアフリカといった具合に。さらには首都だけに飽き足らず、ノートに国名と首都名をまとめながら、なぜか国旗も書きながら覚えていったのです。サクラクーピーペンシル24色セットをフル活用しながら、いろいろな国をノートにまとめながら覚えていったのです。
そして次のターゲットは「天皇家」でした。
なぜ「天皇家」だったか?…全く意図なんてない。ただそこに天皇家があったからだと思う。
これはさすがに苦労しましたよ。漢字も難しいし、似たような名前(特に「後」がつく名前)がたくさん出てくるし。途中で投げ出したくなるときが何度もありました。覚えられなくてイライラしたこともありました。でも何回も書いて覚えたり、音読したりとあらゆるやり方を試しながら最終的に125代全てを覚えたのです。自分で「覚えきった」と認めれたときには、えも言われぬ達成感があったのを今でも覚えているし、そのときに覚えた首都や天皇家を○十年経った今でも完璧に言うことができるのです。
そのときには、円周率のときの悔しさなんてとっくに忘れていました。ただ「途中で投げ出したくない」「最後まで覚えないと納得できない」という一心だったと思います。
正直に言ってそれらの知識はほとんどテストや入試では役立ちませんでした。
がしかし、それ以上に「暗記のやり方」「最後まで粘る力」「本当の達成感」など数多くのことが学べたと思います。何よりも小学生のときには社会科が大嫌いだったのが、これをきっかけに社会科が好きになり、そして今では能開で社会の先生をやっているわけですから、大きな財産だったかも知れません。
今やっている勉強が「テスト」「偏差値」「志望校合格」の目的達成のためになりがちです。それも必要ですし、小6や中3といった受験勉強ではそのようにならざるをえません。
ただ受験学年でなければ、点数のためではなく、何か1つのことをとことんまで極めていく、そんな突き抜けた勉強をしてほしいものです。