突然だけど、天気予報って、どれぐらいの確率で的中するのか、知ってる?
気象庁のホームページに「天気予報の精度検証結果」というページがあって、天気予報がどれぐらいの精度で的中するのか見ることができるんだ。
(http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/kensho/yohohyoka_top.html)
そのページを見てみると、次の日に雨が降るのか降らないのか、夕方に発表した予報が次の日に的中する確率は、1990年には約82%だったのが、2012年には約86%に向上しているとのこと。
観測データの増加・品質改善、天気を予測するための考え方(数値予報モデルと解析手法)の研究、何よりも予測を計算するコンピュータの性能向上によって、天気予報の的中率は年々上昇しているんだって。
今、気象庁で使っているコンピュータは、なんと1秒間に21兆5千億回もの計算ができるんだよ。すごいよね。
それでも、夕方に、ほんの数時間後の次の日の天気でさえ、完璧に予測することはできないんだ。
じゃ、今後さらに研究が進んで、より性能の高いコンピュータが完成すれば、天気予報が100%的中するようになるかと思っちゃうけど、実はそうはならないんだよ。
みんなは、「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」っていう言葉を聞いたこと、あるかな?中国の北京で蝶がはたはたと羽をゆらしたことがきっかけになって、国をまたぎ、大陸を越えて、次から次へと影響が広がっていって、やがてはアメリカのニューヨークに嵐を起こすことがあるかもしれない、ということなんだけど、信じられない話だよね。
カオス理論っていう物理学の理論の中で、バタフライ効果(蝶を英語にするとバタフライだね)と呼ばれている現象で、通常なら無視できると思われるようなとても小さな差が、やがては無視できない大きな差となって現れることがある、ということなんだ。
明日の天気だけでなく、ヒラヒラと落ちてくる落ち葉の動きや、お線香から立ち上る煙の動きなどの自然現象は、「複雑すぎて予測ができません」「ほんのささいなことが、とんでもない結果を生み出すことがあります」と言われているんだ。
人類がより進化して、科学技術がもっと発達すれば、落ち葉の動きぐらいなら完璧に予測できそうなもんだけど、決してできないんだ。
例えば、明日の天気を完璧に計算できるコンピュータが完成したとするよ。
コンピュータに明日の天気を予測させるためには、今現在の気温が何度とか、湿度が何%とか、風向きとか、気圧とか、様々な今現在の状況(初期値っていうんだよ)を入力しないといけない。
そこで、実際に今現在の気温を最新の気象観測装置で完璧に計測し、コンピュータに入力したとする。例えば「東京の今現在の気温は30.002℃」とかって。そしてコンピュータが完璧な計算をして、「明日の東京の天気は晴れ」だという結果になったとする。
で、今度は初期値をほんのちょっとだけ変えてみる。「東京の今現在の気温は30.001℃」とかって。すると、「明日の東京の天気は雨」だという結果が出てきたりするんだ。
これを初期値鋭敏性っていうんだけど、ほんのちょっとだけでも初期値を変えちゃったら、とんでもなく大きく結果が変わってきちゃうんだね。
それこそ、ニューヨークの明日の天気を予測するために、北京の今の気温を30.002℃にするのか、30.001℃にするのかで、予測が大きく変わってしまうんだ。
同じようなお話で、「風が吹けば桶屋が儲かる」っていう話を聞いたことがあるかもしれないね。
さて、とうとう今年のゼミももうすぐ終わろうとしている。
ゼミ、講習会、EXオープン模試、合宿、みんな色々な場面で本当によくがんばったね。
今年初めて講習会に参加した人、ゼミに新しく入会した人、初めて合宿にいった人など、何か生まれて初めての挑戦をした人も多いことだろう。
ずっとティエラの教室に通っている子も、合宿に何度も参加している子も、「やめずに今年も続けてがんばろう」「今年も合宿に挑戦しよう」と決心するのは勇気のいることだったはずだ。
講習会や合宿に参加しようと決心したとき、ゼミに入会しよう、ゼミを続けてがんばろうと決心したとき、もしかすると「目覚ましく成績が上がるかもしれない」「生まれ変わったように成長できるかもしれない」と思っていたかもしれない。
ところが、この1年を振り返ってみてどうだろうか。決心してゼミに入会したのに、講習会をあんなにがんばったのに、勇気を振り絞って合宿に参加したのに、「思ったほど成績が上がらなかった」「思ったほど成長できなかった」と感じているかもしれないね。
でもね、君たちはほんの少しかもしれないけれど、確実に成長し、確かに生まれ変わろうとしはじめているよ。
あいさつの声を出せなかった子が出せるようになった。
いつもノートに赤線を引くのを忘れていた子が、ちゃんと赤線を引くようになった。
消しゴムだとか下じきだとか忘れ物ばっかりしていた子が、忘れ物をしなくなった。
床の上に落ちている紙切れを、自分の落としたゴミじゃなくても拾えるようになった。
難しい問題だとすぐにあきらめてしまっていた子が、粘り強く考えることができるようになった。
的はずれなところばかりノートまとめしていた子が、的確な場所を参考書で調べるようになった。
赤線の余白部分がいつも真っ白だった子が、少しずつ活用するようになった。
試験中にすぐにあきらめてしまっていた子が、最後の1分1秒まで必死に問題に立ち向かうようになった。
合宿では班の仲間たちと協力して、班の役割を果たすことができた。
どれも、小さな蝶が羽ばたくような、小さな変化かもしれない。
でも、その小さな変化を大切にしよう。
この1年間を振り返って、自分の中で起こった小さな成長を思い出そう。
この先、決心が鈍ったり、楽な道へ逃げたくなったりしたら、君たちの中にいる小さな蝶のことを思い出してあげよう。
君たちが忘れずに思い出してあげれば、きっと蝶ははたはたと美しく羽ばたいて、君たちに勇気を与えてくれるよ。
そして、いつか、小さな蝶の羽ばたきが、嵐のような大きな変化や成長を君たちにもたらしてくれる。
春期講習会から、君たちは新しい一つ上の学年がスタートだ。
この春も、努力量の自己新記録達成を目指してがんばろう!