「水五訓」という言葉を聞いたことがありますか?
戦国時代、豊臣秀吉の知恵袋といわれた黒田官兵衛(黒田如水)の教えです。
一.自ら活動して他を動かしむるは水なり
二.常に己の進路を求めて止まざるは水なり
三.障害にあい激しくその勢力を百倍し得るは水なり
四.自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるは水なり
五.洋々として大洋を充たし発しては蒸気となり雲となり雨となり
雪と変じ霰(あられ)と化し凝(ぎょう)しては玲瓏(れいろう)
たる鏡となりたえるも其(その)性を失はざるは水なり
水というものを通して、人間としての生き方を教えてくれる言葉です。
一が伝えたいことは、「率先垂範せよ」ということ。
水は自らが動くことで周りのものを動かし、運んでいきます。人間も、自らは何もしないままで、ああしろ、こうしろと言っても、誰も動くはずがありません。自ら模範を示すことによって周囲を牽引する人になってください。
二が伝えたいことは、「自ら考えて道を拓くことを心がけよ」ということ。
水はどんな環境の中でもその流れを止めることなく動いていきます。何か失敗をした時に、周りのせいにしていませんか?自ら考え、努力することで道を切り拓いていく人になってください。
三が伝えたいことは、「あきらめることからはなにも生まれない」ということ。
順調な水の流れもダムという壁によってさえぎられることもあります。そんな時は、その力を満々と内に蓄えます。蓄積された力があるからこそ、解放された時に巨大なエネルギーを発揮できるからです。困難に直面して、自分の可能性をあきらめてしまってはいけません。苦しい時もじっと耐えて努力を続けていけば、大きな力となってかえってきます。
四が伝えたいことは、「人を追いやることをせずに共に頑張ろう」ということ。
学校や社会にはさまざまな価値観を持つ人が集まっています。感覚、リズム、方法、価値観の合わない人を排除するのではなく、「長所をみつけてそれを生かす」ことをまず考えましょう。川は、脇から濁った水が注がれてきても、「入ってくるな」とか「出ていけ」とは言いません。さまざまな水を一つにまとめ、大きな目的に向かって集約してゆくような、そんな度量を持つ人になってください。
五が伝えたいことは、「常に自然の理(ことわり)にそって物事を考えよ」ということ。
水は温度の変化、器の形によって次々と自らの形を変えます。しかし、その本質は一切変化することがありません。我々人間もまた、変化に対応するのに常に柔軟でなければいけません。与えられた環境の中でいかにして最大の努力を行えるかが大切です。
これから先、色んな困難にぶつかり、迷うことや立ち止まることがあるでしょう。
そのときにはこの「水五訓」を思い出してみてください。
きっと、あなたの道標になってくれることでしょう。