先日、サッカー女子日本代表、通称「なでしこJapan」がワールドカップで優勝し世界一になりました。東日本大震災以来、暗いニュースが続く中で元気をもらった人も多いのではないでしょうか。

試合は延長戦の末「PK戦」で日本が勝利しました。試合を見た人は手に汗握りキッカーとキーパーの攻防を見守ったことでしょう。

「PK戦」で世界一が決まった試合はいくつかあります。

1994年にアメリカで行なわれたワールドカップもその一つです。決勝戦はブラジル対イタリアでした。

PK戦でブラジルが3人決め、イタリアの選手が外せばブラジルの優勝が決まってしまうという大切な場面。蹴るのは「イタリアの至宝」と呼ばれたロベルト・バッジョ選手でした。

世界一が決まる大事な、大事な一本。しかし、バッジョの蹴ったボールは無情にもゴールの枠を上に外れ、ブラジルの優勝が決まります。

PKを外したバッジョはこんなことばを残したといいます。

PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ。」

バッジョのことばの裏には、きっと、こんな考えがあったのでしょう。

失敗するのは恥ずかしいことではない、むしろ、失敗を恐れてボールを蹴らない、チャレンジしないことの方が、恥ずべきことであると。

失敗は行動をおこしたものにしかできません。

さあ、夏が来ました。失敗を恐れずぶつかっていく夏にしませんか?

皆さんは、「なぜ勉強を頑張るのか?」と質問されたら何と答えますか?
おそらく、「学校のテストでいい点をとるため」「第1志望の高校や大学に合格するため」「将来、お医者さんになるため」など、「目標達成のため」と答える人が多いとも思います。あるいは「英語が好きだから」「数学(算数)で難しい問題を解けるとうれいしいから」といった勉強への興味関心を理由に上げる人もいるかもしれません。
では、「なぜ部活を頑張るのか?」と聞かれたら何と答えますか?
「将来、スポーツ選手や音楽家になるため」という人もいると思いますが、大抵の人は勉強と同じように、「同じ部活の皆と勝利したい」などの直近の目標を上げるか、「スポーツや音楽などが好きだから」という興味関心を理由に上げると思います。
もちろん、これらの答えに正解はありません。勉強にしても、部活にしても目標に向かって取り組むことは大切なことです。だだ、将来のある皆さんには是非、「勉強や部活を頑張る理由」についてもう1度、よく考えを欲しいと思います。

皆さんが生まれる前の1981年にアガデミー賞をとった「炎のランナー」という作品があります。
実話に基づいて作られた映画で、ハロルドとエリックの2人の青年がオリンピックに出るお話です。2人とも恵まれた才能があり、絶え間ない努力をすることで、オリンピック金メダルを取るという最高の結果を手に入れます。しかし、この2人の青年には大きな違いがありました。それは、2人がオリンピックで頑張る理由です。
ハロルドはユダヤ人系の血を引いていたため、幼い頃から差別や偏見を受けており、その鬱憤を晴らすために陸上に打ち込んでいました。そして、ハロルドは周りを見返すため、あるいは自分の名誉のために金メダルを取ろうとします。
それに対して、エリックにとって陸上を頑張ることは、周りに対する感謝の気持ちのあらわれであり、自分の信念を守ることでした。

結果的に2人はオリンピックで金メダルを取るという同じ結果を得ます。しかし、金メダルを取ったあとの2人の気持ちには大きな違いがありました。ハロルドは目標を達成し、周囲からも祝福されているにも関わらず、心の虚しさを感じます。それに対して、エリックには達成感からくる心の喜びを感じます。

皆さんこの2人の違いはどこからきたと思いますか?先生は2人の努力する動機に違いがあったと思います。自分自身の名誉や周囲に対する反骨心で努力したハロルドと、周囲に対する感謝の気持ちと自分の信念を貫いたエリックとの違いが最後に心の変化という形で表れたと思います。

話を元に戻しますが、皆さんに勉強や部活を頑張るにあたり、2つのことを考えて欲しいと思います。

1つ目は、周囲に対する感謝の気持ちです。どんなに自分が頑張っているつもりでも、人間一人では何にも出来ません。家族や学校の先生、塾の先生、友達などの支えがあって自分が頑張れるということを忘れないでください。
そして、2つ目は将来のある皆さんだからこそ、多くの人を幸せに出来るような夢を持って欲しいということです。「医師になって、多くの病気で困っている人を助けたい!」「原発に変わる環境に優しいエネルギーを開発したい!」「音楽を通して多くの人に喜びを与えたい!」そんな夢を持って、勉強を頑張ってくれる子どもたちがティエラからたくさん出てきて欲しいと思います。
最後になりますが、今までの自分の学習を振り返り、エリックのような達成感を得られる、そんな夏休みになることを先生は期待しています。

みなさんは、桑田真澄さんという人を知っていますか?もう引退してしまった人ですから、野球好きの人でも知っている人は少ないかもしれませんね。元プロ野球選手で、先生が小学生~高校生のころ、桑田さんは全国の野球少年にとってはスーパーヒーローだったのです。

どれくらいすごい人だったかというと、まず、高校1年生の夏の甲子園で、いきなり事実上の「エース」として、同じ1年生で「4番バッター」の清原選手とともに全国制覇。そしてその後も大活躍を続け、甲子園では、高校3年間で出られる5つの大会にすべて出場。そして優勝が2回、準優勝が2回、ベスト4が1回という、とんでもない結果を出した人です。個人としても、甲子園の勝利数は、戦後第1位。甲子園で打ったホームランの数は歴代第2位です。(歴代1位は清原選手)その後プロ野球に入り、巨人のエースとしても大活躍した人です。

そんなすごい人の高校時代のお話です。

桑田さんは、高校に入学し野球部に入ったのですが、最初に「無理だ」と思ったそうです。まわりはみんな体も大きいし、野球がうまい。自分は体も小さいし、結果も出ない。そこで、高校をやめることも考えたそうです。しかし、そこであきらめずに努力を続けたところ、どんどん結果が出るようになったのです。

ここまでは、よくある話ですね。「努力をすれば必ず結果は出る」というお話はみなさんもよく聞かされることでしょう。しかし、桑田さんの努力の話は少し違うのです。

高校生の桑田さんは2種類の努力をしました。ひとつは「表の努力」。これは、走ったり、腹筋をしたり、ピッチング練習をしたり・・・。つまり、野球がうまくなるための努力ですね。しかし、桑田さんは、もうひとつ、「裏の努力」をしたのです。

みんなよりも少しだけ早く起きて、1日10分、毎日寮のトイレ掃除をする。みんなより少しだけ早くグランドに行き、20本だけ草むしりをする。ろうかに落ちているゴミを拾う。大きな声であいさつをする。玄関の靴をそろえる。こういうことを3年間続けました。野球にまったく関係のない努力ですね。

しかし、この「裏の努力」を続けるうちに、不思議なことが起きてきました。桑田さんが打たれたときには、味方の正面に打球が飛んだり、味方がファインプレーをしてくれたり、自分が打った打球が風に押されてホームランになったり・・・。とにかく「運」が良くなっていったそうです。桑田さんによると、甲子園で打った6本のホームランも、ほとんどが「風」のおかげだということです。桑田さんは、決して「精神論」だけの人ではありません。日本の野球界でも屈指の「理論派」です。そんな人が言う言葉だけにとても興味深いですね。

さて、この話を聞いてみなさんはどう思いましたか?「そんなわけない」「運なんて信じられない」と思う人もいるでしょう。「1日10分ならやってみようかな?」「靴をそろえるくらいならやってみてもいいかな?」と思う人もいるでしょう。

でも、1日10分のことで運がよくなるのであればやってみる価値はあるのではないでしょうか。やってみて損はなさそうですね。いや、やってみたら、続けてみたら、きっといろんないいことがありますよ。

では最後に桑田さんの言葉で終わります。

「裏の努力に、技術は必要ありません」

平成3年9月28日早朝、津軽地方を襲った台風19号。
最大瞬間風速50メートルを越える強風で津軽地方全域にわたり大きな被害を残しました。

町のいたるところで電柱が倒れ、建物が損壊し、トタン屋根が飛んでしまうほどの強烈な台風でした。当時、連日のようにその凄まじい状況をテレビ中継していたのを思い出します。

青森、津軽地方といえばリンゴ。台風通過後に、リンゴ畑を見に行った農家の方々は、皆しばらく声も出ませんでした。収穫前のリンゴが木から落ち、あたり一面に敷き詰められている。9割がたのリンゴが出荷できなくなりました。そんな状況を見て、りんご生産に見切りをつけた人もいたそうです。落ちたリンゴを拾い集めながら、農家の方々は何を考えていたのでしょう。普通なら、どうしようもない状況に途方にくれ、ただただ悩むばかり。リンゴで生計を立てている農家にとっては死活問題です。

ところが、この危機的な状況をいとも簡単に切り抜ける打開策が若いリンゴ農園経営者の間から提案されました。50メートル以上の暴風にも耐えた落ちないりんごを、全国の神社で、受験生に縁起物として販売し、併せてりんご栽培の起死回生の一助にしようというアイデアが出されたのです。

まず、落ちないりんご販売実行委員会が組織されました。 受験シーズンに間に合わせるため、しばしば会議が開かれ、そして、『落ちないりんご』ができました。値段はおそらく落ちた分をカバーできるように通常よりは高く設定されていたのでしょう。

明治神宮(東京)、湯島神社(東京)、亀戸天神社(東京)、大国魂神社(東京)、谷保天満宮(東京)、鶴岡八幡宮(神奈川)、岩津天満宮(愛知)、熱田神宮(愛知)の、計8カ所で販売された『落ちないリンゴ』は瞬く間に完売し、リンゴ農園の経営は守られました。

『落ちないリンゴ』を提案した若手経営者は、ものすごいアイディアマンだったのでしょうか。そうではないのです。要は、“着眼点の違い”だけなのです。

「9割がたのリンゴが落ちてしまった」という“事実”に対して、散らばったリンゴを見て「どーしよー」とただ途方にくれた人と、落ちなかったリンゴを見て「どーしよー」と考えた人。このちょっとした視点の差が、経営を諦めた人と、『落ちないリンゴ』で成功した人との大きな差を生んだのです。人間って、基本的にはNegativeな方に目が向いてしまうものです。
大抵の人がそうだと思います。けれど、ちょっと考え方や視点を変えるだけで、大分違った結果を生むものです。だったら、Positiveに考えたほうがいいですよね。楽しく生きるために、日頃からPositive Thinkingの訓練をしましょう!