みなさんは、桑田真澄さんという人を知っていますか?もう引退してしまった人ですから、野球好きの人でも知っている人は少ないかもしれませんね。元プロ野球選手で、先生が小学生~高校生のころ、桑田さんは全国の野球少年にとってはスーパーヒーローだったのです。
どれくらいすごい人だったかというと、まず、高校1年生の夏の甲子園で、いきなり事実上の「エース」として、同じ1年生で「4番バッター」の清原選手とともに全国制覇。そしてその後も大活躍を続け、甲子園では、高校3年間で出られる5つの大会にすべて出場。そして優勝が2回、準優勝が2回、ベスト4が1回という、とんでもない結果を出した人です。個人としても、甲子園の勝利数は、戦後第1位。甲子園で打ったホームランの数は歴代第2位です。(歴代1位は清原選手)その後プロ野球に入り、巨人のエースとしても大活躍した人です。
そんなすごい人の高校時代のお話です。
桑田さんは、高校に入学し野球部に入ったのですが、最初に「無理だ」と思ったそうです。まわりはみんな体も大きいし、野球がうまい。自分は体も小さいし、結果も出ない。そこで、高校をやめることも考えたそうです。しかし、そこであきらめずに努力を続けたところ、どんどん結果が出るようになったのです。
ここまでは、よくある話ですね。「努力をすれば必ず結果は出る」というお話はみなさんもよく聞かされることでしょう。しかし、桑田さんの努力の話は少し違うのです。
高校生の桑田さんは2種類の努力をしました。ひとつは「表の努力」。これは、走ったり、腹筋をしたり、ピッチング練習をしたり・・・。つまり、野球がうまくなるための努力ですね。しかし、桑田さんは、もうひとつ、「裏の努力」をしたのです。
みんなよりも少しだけ早く起きて、1日10分、毎日寮のトイレ掃除をする。みんなより少しだけ早くグランドに行き、20本だけ草むしりをする。ろうかに落ちているゴミを拾う。大きな声であいさつをする。玄関の靴をそろえる。こういうことを3年間続けました。野球にまったく関係のない努力ですね。
しかし、この「裏の努力」を続けるうちに、不思議なことが起きてきました。桑田さんが打たれたときには、味方の正面に打球が飛んだり、味方がファインプレーをしてくれたり、自分が打った打球が風に押されてホームランになったり・・・。とにかく「運」が良くなっていったそうです。桑田さんによると、甲子園で打った6本のホームランも、ほとんどが「風」のおかげだということです。桑田さんは、決して「精神論」だけの人ではありません。日本の野球界でも屈指の「理論派」です。そんな人が言う言葉だけにとても興味深いですね。
さて、この話を聞いてみなさんはどう思いましたか?「そんなわけない」「運なんて信じられない」と思う人もいるでしょう。「1日10分ならやってみようかな?」「靴をそろえるくらいならやってみてもいいかな?」と思う人もいるでしょう。
でも、1日10分のことで運がよくなるのであればやってみる価値はあるのではないでしょうか。やってみて損はなさそうですね。いや、やってみたら、続けてみたら、きっといろんないいことがありますよ。
では最後に桑田さんの言葉で終わります。
「裏の努力に、技術は必要ありません」